CHT和平協定(チッタゴン丘陵和平協定)全訳文

(翻訳:延末謙一)
Chittagong丘陵県をバングラデシュ人民共和国憲法の効力が及ぶ範囲内に位置づけ、バングラデシュの国家主権と領土的一体性を完全かつ確固たるも のとして守るために、バングラデシュ人民共和国代表National Committee on Chittagong Hill TractsとChittagong丘陵県の住民代表Parbattya Chattagram Jana Sanghati Samity(Chittagong丘陵人民連帯連合協会)は、以下の4章(A章、B章、C章、D章)からなる合意に達した。この合意によって、 Chittagong丘陵県のすべての人びとに政治的、社会的、文化的、経済的権利と教育を受ける権利が認められ、社会経済的発展が促進され、すべてのバ ングラデシュ市民が享受している権利と彼らがなし遂げた発展の成果もこの合意によってよりよく守られることになる。

A章 (総則)

1.Chittagong丘陵県に少数民族が住んでいることを考慮し、双方は、彼らの民族の独自性が守られる必要性と、この地域が総合的な発展を達成する必要性を承認した。

2.合意に沿うように、またこの協定のさまざまな条項によって課された責任をまっとうするために、双方は、関連法規をすみやかに制定し、変更し、改正し、条文を追加しようと決めた。

3.この協定の履行過程を監視するために、以下の委員からなる履行委員会が設置される。
(ア)首相によって指名される委員を委員長とする。
(イ)この協定の条項によって設置される作業部会の長を委員とする。
(ウ)PCJSSの代表を委員とする。

4.この協定は、双方によって調印された日から発効し、双方によって履行される。この協定は、発効の日から規定されたすべての措置が履行されるまで有効である。

B章 (Chittagong丘陵県地方政府評議会・丘陵県評議会)

双方は、既存のParbatya Zila Sthanio Sarkar Parishad Ain 1989(1989年丘陵県地方政府評議会法、つぎの3つの法律を指す、1989年Rangamati県地方政府評議会法;1989年Bandarban 県地方政府評議会法;1989年Khagrachhari県地方政府評議会法)の変更、改正、条文追加、廃止に関して合意に達した。それらの法律のさまざ まな条項は、この協定に矛盾しないかぎり有効である。

1.1989年法のさまざまな条項にある「少数民族」という言葉は有効である。

2.「丘陵県地方政府評議会」を「丘陵県評議会」に読み替える。

3.「非少数民族永住者」とは、少数民族ではないが、丘陵県の特定の地点に合法的に土地を所有し、普通はそこに住む者のことをいう。

4.(ア)各丘陵県評議会に女性議席を3つおく。そのうちの1つは非少数民族が埋める。
(イ)1989年法第4条の1、2、3、4項はそのまま有効である。
(ウ)第4条5項の2行目にある「副理事」を「民族会長」に読み替える。
(エ)第4条につぎの文章が追加される。「当該の民族会は、ある者が非少数民族であるか否かを、当該の集落長、ユニオン評議会議長、地方都市議会議長が発 行した証明書を提出させて確定する。非少数民族の者は、当該の民族会から受け取った証明書なしでは非少数民族候補になることはできない。」

5.1989 年法第7条では、議長その他の公選評議員は、職務につくまえに、Chittagong管区理事の前で宣誓をおこなうか、彼に宣誓書を提出しなければならな い、と定められている。この「Chittagong管区理事」を変更し、評議員は、「いずれかの最高裁高等部判事」の前で宣誓をおこなうか、彼に宣誓書を 提出しなければならない、とする。

6.1989年法第8条の4行目にある「Chittagong管区理事に」を「選挙規則にしたがって」に読み替える。

7.1989年法第10条の2行目にある「3年」を「5年」に読み替える。

8.1989年法第14条につぎの文章を追加する。議長職が空席のとき、または議長が不在のときに、評議会の他の評議員によって選ばれた少数民族評議員が議長となり、その職務を遂行する。

9.1989年法第17条をつぎのように読み替える。選挙人名簿に登載されるのが適切であるとみなされるのは、(1)バングラデシュ国籍を持ち、(2)18歳以上で、(3)どの裁判所からも精神的障害者であると宣告されておらず、(4)丘陵県に永住している者である。

10.1989年法第20条2項に、「選挙区の確定」という言葉を新たに追加する。

11.1989年法第25条2項につぎの文章を追加する。評議会の会合ごとに選ばれた議長、または評議会の他の評議員によって選ばれた少数民族評議員は、議長職が空席のとき、または議長が不在のときに、議長の代わりとなり、その職務を遂行する。

12.Khagrachhari 県全域がMong族会によって独占されているわけではないので、1989年Khagrachhari県地方政府評議会法第26条にある 「KhagrachhariのMong族長」を「Mong族会長とChakma族会長」に読み替える。同様に、Rangamati県評議会にBomang 族会長が出席する可能性がある。同様の理由で、1989年Bandarban県地方政府評議会法の当該条項につぎの文章を追加する。Bomang族会長 は、みずからが望むとき、または招待されたときに、Bandarban県評議会に出席できる。

13.1989年法第31条1、2項につぎの文章を追加する。副理事の地位にある者のなかから、実行委員長が評議会に理事として参加する。実行委員長には、少数民族委員が優先して選ばれる。

14. (ア)1989年法第32条1項につぎの文章を追加する。評議会の活動を適切に指揮するために、評議会は、さまざまな階級の委員職や職員職を新設すること ができる。(イ)第32条第2項はつぎのように改正される。評議会は、規則にしたがって、3級、4級職員を雇用し、彼らを異動させ、彼らの権限を中断さ せ、終了させ、彼らに賞罰を与えることができる。ただし、職員の任用にあたっては、当該丘陵県に住む少数民族が優先されなければならない。(ウ)第32条 3項にある、政府は、評議会の助言のもとに、その他の委員を任命することができる、との条文に続くつぎの文章を削除する。政府は、政府規則にしたがって、 委員の権限を中断させ、終了させ、彼らに賞罰を与えることができる。

15.1989年法第33条3項に「規則にしたがって」という言葉を追加する。

16.1989年法第36条1項の3行目にある「または政府によって考案されたなんらかの手段によって」という文章を削除する。

17.(ア)1989年法第37条1項の4番目の条文は有効である。(イ)第37条2項(エ)に「規則にしたがって」という言葉を追加する。

18.1989年法第38条3項は削除される。また4項はつぎのように改正される。「ある会計年度が終わる前でも、必要があればいつでも次の予算を策定し承認できる。」

19.1989年法第42条につぎの文章を追加する。「評議会は、政府からの交付金を使って、政府から権限を移譲された範囲内で、開発事業を承認し、発案し、実施することができる。全国的な開発計画は、関係省庁、管区、機関が評議会をつうじて実施する。」

20.1989年法第45条2項の2行目にある「評議会」を「政府」に読み替える。

21.1989 年法第51、52、53条をつぎの文章に読み替える。「政府は、必要があれば、前述の規則の目的にそうように評議会の活動を能率化するために、助言や規制 的指令を与えることができる。」「評議会のなんらかの活動または活動計画が、前述の規則に違反しているか矛盾しているという明らかな証拠をつかんだとき、 政府は、説明と情報を文書で求めることができる。政府はまた、この件に関して助言や指令を与えることができる。」

22.1989年法第53条3項の「法」という言葉の前にある「評議会の廃止から90日以内に」という文章を、「廃止期限の終了後に」に読み替える。

23.1989年法第61条の3、4行目にある「政府」を「省」に読み替える。

24. (ア)1989年法第62条1項をつぎの文章に読み替える。「現在公布されている法律の条文にかかわりなく、丘陵県警察の警部補以下の職員は、規定の規則 にしたがって評議会によって任命される。また評議会は規定の規則にしながって彼らを異動させ、彼らに賞罰を与える。ただし、任命にあたっては丘陵県の少数 民族が優先されなければならない。」(イ)第62条3項の2行目にある「現在公布されている法律の条文にかかわりなく」を「法律と規則にしたがって」に読 み替える。

25.1989年法第63条の3行目にある「支持が与えられる」という言葉は残される。

26.1989 年法第64条はつぎのように改正される。(ア)現在公布されている法律にかかわりなく、評議会の事前の承認なしには、賃貸可能な公有地を含む丘陵県のいか なる土地も、賃貸、売却、購入、譲渡できない。ただし、保留林、Kaptai水力発電事業地域、Betbunia衛星基地局地域、国有工場、政府名で登記 された土地については、この制限の対象としない。(イ)現在公布されている法律にかかわりなく、評議会の事前の審議と承認なしには、丘陵県評議会の管轄下 にあるいかなる土地、丘陵地、森林も政府は取得あるいは譲渡できない。(ウ)評議会は、酋長、議長、監督、測量技師、土地問題調査官、土地問題委員会副理 事の仕事を指揮し、統制する。(エ)Kaptai湖周辺の土地は、元の所有者に優先的に賃貸される。

27.1989年法第65条はつぎのように改正される。現行法にかかわりなく、当分のあいだ、丘陵県の土地開発税は評議会のものとし、この費目で徴収された税は評議会の会計に組み入れる。

28.1989年法第67条はつぎのように改正される。評議会と政府は、両者のあいだの調整のために必要であると思われるとき、そのための提案をおこなう。調整作業は両者の協議をつうじておこなわれる。

29.1989年法第68条1項はつぎのように改正される。この法律の目的を達成するために、政府は、評議会との審議をへて、官報で規則を公布できる。規則の公布の後でも、評議会は規則の再検討を政府に求めることができる。

30. (ア)1989年法第69条1項の1、2段落目にある「政府の事前の承認」という言葉は削除され、3段落目にある「おこなわれるべきである」という言葉の 後につぎの文章を追加する。政府がなんらかの条文に賛成できないとき、その条文にかんして助言や指令を与えることができる場合がある。(イ)第69条2項 (ク)にある「議長の権限は評議会の職員に委譲しうる」という文章は削除される。

31.1989年法第70条は削除される。

32.1989 年法第79条はつぎのように改正される。国会またはその他の公的機関で承認された法律が、丘陵県に困難をもたらすか少数民族にとって有害であると思われる とき、評議会は、その困難や害の根拠を明示したうえで、政府に文書で訴えることができる。政府は、その訴えにもとづいて、救済のための適切な措置を講じ る。

33.(ア)評議会の活動についての別表1番にある「規律」という言葉の後に「監督」という言葉が追加され る。(イ)別表3番につぎの文章を追加する。(1)職業教育、(2)母語による初等教育、(3)中等教育。(ウ)別表1番6項(イ)にある「保留」という 言葉は削除される。

34.丘陵県評議会の機能と責任に、つぎの項目が追加される。(ア)土地と土地管理。(イ) 地方警察。(ウ)少数民族法と社会正義。(エ)青少年福祉。(オ)環境保護と開発。(カ)地域観光。(キ)改良基金と、地方都市議会とユニオン評議会をの ぞく政府機関の管理。(ク)地域工業、商業への認可の発行。Kaptai水域をのぞく河川、運河の適切な利用と灌漑。(ケ)出生死亡統計の管理。(コ)商 取引。(サ)ジュム農法。

35.別表2番にある評議会が徴収する税、料金、徴収権、手数料に、つぎの費目が追加 される。(ア)人力車登録料。(イ)商品購入売却税。(ウ)固定資産税。(エ)家畜税。(オ)民事訴訟手数料。(カ)国有、私有工場保有税。(キ)森林資 源利用料。(ク)映画、祭典、サーカスへの補足税。(ケ)鉱物資源の探査と採掘について政府が結んだ契約への請求権。(コ)商業税。(サ)宝くじ 税。(シ)漁業税。

C章 (丘陵県域評議会)

1.1989年丘陵県地方政府評議会法を改正し、それら評議会の権限を強化し、評議会を効率化して、3丘陵県評議会を合併し、丘陵県域評議会を設置する。

2.丘陵県域評議会議長は、3丘陵県評議会の公選評議員によって選ばれる。議長は少数民族出身者でなければならず、彼は国務大臣相当の待遇を受ける。

3. 丘陵県域評議会は、議長も含めて22人の評議員で構成される。評議員の3分の2は少数民族から選ばれる。評議会の構成はつぎのようになる。議長1名、少数 民族男子評議員12名、少数民族女子評議員2名、非少数民族男子評議員6名、非少数民族女子評議員1名。少数民族男子評議員12名のうち、5名は Chakma族から、3名はMarma族から、2名はTripura族から、1名はMurong族とTanchainga族のなかから、1名はLusai 族、Bom族、Pankho族、Khumi族、Chak族、Khiang族のなかから選ばれる。非少数民族男子評議員は、3丘陵県から各2名ずつが選ばれ る。少数民族女子評議員については、1名がChakma族から、もう1名が他の部族から選ばれる。

4.丘陵県域評議会には3つの女子留保議席がもうけられ、その3分の1は非少数民族に与えられる。

5.丘陵県域評議会の評議員は、3丘陵県評議会の公選評議員によって選ばれる。3丘陵県評議会の議長は、職務上の権限で丘陵県域評議会の評議員となり、投票権を持つ。丘陵県域評議会評議員の立候補資格は、3丘陵県評議会評議員の立候補資格と同様である。

6.丘陵県域評議会の任期は5年である。予算案の策定と承認、評議会の解散、評議会規則の制定、職員と被雇用者の任命、これらに関連する管轄事項や事務手続きの管理についての権限は、3丘陵県評議会に与えられ適用されているものと同様である。

7.主席行政官は丘陵県域評議会によって任命され、その待遇は政府の次官補と同等である。この職の任命にさいしては、少数民族候補が優先される。

8.(ア)議長職が空席のとき、当分のあいだの措置として、3丘陵県評議会評議員によって、丘陵県域評議会の他の少数民族評議員が議長に選ばれる。(イ)なんらかの理由で評議員職が空席となったとき、それは補欠選挙によって補充される。

9. (ア)3丘陵県評議会の指導のもとにおこなわれているすべての開発事業は、丘陵県域評議会によって調整される。丘陵県域評議会はまた、3丘陵県評議会の管 轄下にあるあらゆる事業の全般的監督や調整をおこなう。3丘陵県評議会に課せられた職務の遂行において紛争や調整の欠如が起こったとき、丘陵県域評議会の 決定が最終のものとみなされる。(イ)丘陵県域評議会は、地方都市議会をふくむ下位の地方評議会を調整し監督する。(ウ)丘陵県域評議会は、3丘陵県の一 般行政、法秩序の維持、開発にかんする事項について調整と監督をおこなう。(エ)丘陵県域評議会は、NGOの活動との調整も含め、災害復興と救援活動につ いて指示を出す。(オ)少数民族の規則と民事裁判は丘陵県域評議会の管轄である。(カ)丘陵県域評議会は重工業への認可を出す。

10.Chittagong丘陵県開発局は、丘陵県域評議会の一般的、全般的監督のもとにその職務を遂行する。政府は、開発局議長の任命にさいして、資格のある少数民族候補を優先する。

11.1900年Chittagong丘陵県行政規則、その他の関連法規、1989年丘陵県地方政府評議会法のあいだに矛盾が発見されたときは、丘陵県域評議会の助言と提案にしたがって解決される。

12.直接、間接選挙によって丘陵県域評議会が設置されるまでのあいだ、政府は暫定丘陵県域評議会を設置し、丘陵県域評議会の職務を遂行させる。

13.政府は、丘陵県域評議会の助言にしたがい、丘陵県域評議会と審議したうえで、Chittagong丘陵県にかんする法律を制定する。

14. 丘陵県域評議会の資金は、つぎの財源でまかなわれる。(ア)県評議会基金からの給付。(イ)評議会によって与えられ管理される資産の利潤。(ウ)政府その 他の公的機関からの貸与と贈与。(エ)機関、個人からの贈与。(オ)評議会がおこなう投資からの利潤。(カ)その他評議会が受け取る給付。(キ)政府の指 示によって評議会に与えられるその他の財源からの給付。

D章 (帰還難民の生活再開支援、シャンティバヒニへの特赦、その他)

 双方は、Chittagong丘陵県域に日常の環境をとり戻すための計画に合意し、この目的のために帰還難民の生活再開支援、シャンティバヒニへの特赦、その他の関連する問題や活動について、つぎのような見解に到達した。

1.1997 年3月9日、インドTripura州Argartalaにおいて、同州に住む少数民族難民の帰還について、政府と難民代表のあいだで協定が結ばれた。この 協定にもとづき、1997年3月28日より難民の帰還が始まった。この帰還は継続され、PCJSS代表はこの件にかんして可能なかぎりの協力をおこなう。 3丘陵県内にいる難民は、作業部会による難民身分認定をつうじて帰還させられる。

2.少数民族の土地登記と土地 所有権は、それが確認された後に確定される。この目的のために、政府は、Chittagong丘陵県の土地調査を開始し、この協定にもとづいて設置される 丘陵県域評議会の助言にもとづき、適切な調査と事実認定をおこなって、土地にかんするすべての紛争を解決する。これらの措置は、この協定が政府と PCJSSによって調印、施行され、国外と国内の少数民族難民の帰還が始まるとすぐに実施される。

3.政府は、土地を持たない少数民族、あるいは1世帯で2エーカー未満の土地しか持たない少数民族などの状況に応じて、それぞれの帰還地で2エーカーの土地が賃貸されることを保障する。ただし、土地が足りないときは、森林がわり当てられる。

4. 土地にかんするすべての紛争を解決するために、退官判事を長とする委員会(土地委員会)が設置される。帰還少数民族の土地紛争の解決とは別に、委員会は、 不法な占拠や財産侵害によって獲得された土地や丘陵地の所有権をすべて無効にする権能を持つ。この委員会の評決に対していかなる訴えも起こすことはでき ず、委員会の決定が最終のものとみなされる。これはKaptai湖周辺の土地にも適用される。

5.土地委員会はつぎの委員で構成される。(ア)退官判事。(イ)(関係のある)民族会長。(ウ)丘陵県域評議会議長。(エ)管区理事、理事補。(オ)(関係のある)県評議会議長。

6.(ア)土地委員会の任期は3年である。ただし丘陵県域評議会の助言にもとづき任期は延長されうる。(イ)委員会は、既存の法規と、Chittagong丘陵県の慣習や制度のあいだの紛争を解決する。

7.政府機関から帰還少数民族難民に貸しだされたものの、内戦状態のために適切に運用されなかった資金については、利子全額と元金がすべて帳消しにされる。

8.ゴム栽培その他の土地のわり当て。ゴム栽培そのたの目的で非少数民族や非居住者にわり当てられたものの、この10年間に適切に利用されなかった土地については、そのわり当てが取り消される。

9. 政府は、Chittagong丘陵県の開発のため、最大限の数の事業を実施するために、優先的に追加資金を配分する。丘陵県の発展のために、産業基盤の整 備を優先して事業は実施され、この目的のために、政府は必要な資金を配分する。政府は、国内と国外の観光客のために観光業の発展を促進し、同時に、この地 域の環境問題にも留意する。

10.定員の確保と奨学金の給付。政府は、少数民族がバングラデシュの他の地域の人 びとと条件が同じになるように、公職と高等教育について、少数民族むけ定員枠をひき続き確保する。この目的のために、政府は、教育機関において、少数民族 男女にさらに多くの奨学金を給付する。政府は、留学や調査活動に必要な奨学金を給付する。

11.政府と国会議員は、少数民族の文化と遺産の特徴を保持するために活動する。政府は、国民生活の中核をなす文化活動と同じほど少数民族の文化活動が活発になるように、適切な保護策と支援を与える。

12.PCJSSは、この協定の調印から45日以内に、その指揮下にある武装活動員と所有している武器の詳細な目録を政府に提出する。

13. 政府とPCJSSは、この協定の調印から45日以内に、PCJSSによる武器のひき渡しの日時と場所を共同で決定する。政府は、PCJSSの名簿に記載さ れた武装活動員が武器を引き渡すとされた日時以降、彼らとその家族が通常の生活に戻るために必要なあらゆる安全策をとる。

14.政府は、予定された日時に武器弾薬をひき渡した武装活動員に特赦を与える。政府は、以前の彼らに対する告訴をとり下げる。

15.政府は、期限として定められた日時に武器をひき渡さなかった武装活動員に、法的対応をとる。

16. 全般的な特赦が、通常の生活に戻ったすべてのPCJSS活動員に与えられる。また、この特赦は、PCJSSの活動にかかわったすべての永住者にも与えられ る。(ア)帰還したPCJSS活動員1世帯に、通常の生活に戻る時点で現金5万タカが支給される。(イ)PCJSSの武装活動員、一般活動員に対するあら ゆる告訴、逮捕状、指名手配はとり下げられ、欠席裁判の後に下された判決は、武器ひき渡しと通常の生活への復帰の後、すみやかに取り消される。獄中にいる PCJSS活動員は釈放される。(ウ)同様に、武器ひき渡しと通常の生活への復帰の後は、たんにPCJSS活動員であるというだけで起訴されたり刑罰を受 けたりすることはない。(エ)国営銀行その他の政府機関からPCJSS活動員に貸し出されたものの、内戦状態のために適切に運用されなかった資金について は、利子全額と元金がすべて帳消しにされる。(オ)公職に雇用されたPCJSS活動員は、そのままそれぞれの地位で雇用され続け、彼らの家族にも、能力に もとづいて職が与えられる。この場合、年齢にかんする政府の採用方針が緩和される。(カ)家内工業、園芸その他の自営業をおこなうPCJSS活動員に、条 件の緩やかな銀行貸付がおこなわれる。(キ)教育を容易にするための措置がPCJSSの子どもに与えられる。外国の教育機関から取得した学業証明は有効で ある。

17.(ア)政府とPCJSSがこの合意に調印し、これを施行し、また、PCJSS活動員が通常の生活に 戻ると直ちに、Chittagong丘陵県にあるすべての仮設陣地の陸軍、アンサル、村落防衛隊は常設駐屯地に撤退し、この撤退期限が決められる。ただ し、バングラデシュ国境警備軍、(3丘陵県庁所在地、Alikadam、Ruma、Dighinalaにある)常設駐屯地は除く。文民の行政管理下に置か れているバングラデシュの他の地域と同様に、法秩序が著しく悪化したとき、また、自然災害のときに、陸軍隊員は、適切な規則と手続きのもとに丘陵県に派遣 される。丘陵県域評議会は、必要なときは適切な時期にそのような援助や救援を関係官庁に要請する。(イ)軍隊、準軍隊が陣地として使い、放棄された土地 は、元の所有者に返されるか、県評議会が所有する。

18.少数民族よりも前にChittagong丘陵県に住んでいた永住者には、丘陵県内の政府機関、半官半民機関、評議会、特殊法人の職員に雇用される。特定の職について適切なChittagong丘陵県永住者がいないとき、政府は、一定期間先取特権者を任命する。

19.Chittagong丘陵県省が設置され、少数民族出身者が大臣に任命される。この省を支援するために、つぎの委員が諮問委員会を構成する。
(1)Chittagong丘陵県省大臣。
(2)丘陵県域評議会の議長または代表
(3)Rangamati丘陵県評議会の議長または代表。
(4)Khagrachhari丘陵県評議会の議長または代表。
(5)Bandarban丘陵県評議会の議長または代表。
(6)Rangamati区選出国会議員。
(7)Khagrachhari区選出国会議員。
(8)Bandarban区選出国会議員。
(9)Chakma国王。
(10)Bomang国王。
(11)Mong国王。
(12)3丘陵県から1名づつ政府によって任命される非少数民族永住者。

この協定はベンガル語で作成され、ベンガル暦1404年Agrahayan月18日、西暦1997年12月2日、
Dhakaで完成、調印される。

バングラデシュ人民共和国代表Abul Hasanat Abdullah(署名)NCCTH委員長
Chittagong丘陵県住民代表Jyotirindra Bodhipriya Larma(署名)PCJSS会長

(DS19971203, The Daily Ittefaq 19971203)