2014/09/17 Wednesdayauthor: JummaNet サイト管理者

国連先住民族問題常設フォーラムでの提言活動を振り返る【part2】

ジュマ・ネットが例年参加してきた、国連先住民族問題常設フォーラムにおける提言活動の成果と課題につき、共同代表トム・エスキルセンが二回に分けて報告いたします。
前半のpart1に続き、今回は後半として、国連の諸機関との対話・連携についての報告です。

<国連機関との対話>
フォーラム会期の傍らで、ジュマ活動家たちとCHT委員会は、CHT問題の解決に影響力を発揮できそうな主要な国連機関と面談し、協力を要請してきた。話し合いの主な内容を紹介する。
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ジュマの民族衣装「カディ」を身に着けるパン・ギ・ムン国連事務総長

<PKO局~人権審査の新方針が実現!>
2011年から毎年、PKO局に人権審査制度を導入するよう申し入れてきた。当初、PKO局はすでに内規による人権審査制度を導入していると説明した。直接雇用する監視官は、一人一人の人権履歴を審査し、各国政府が提供する部隊に関しては「その人員が人権侵害に関わったことがない」という約束を政府から取りつけるとのことだった。派遣先や本国で人権侵害に関わったことが判明した人員は、本国に強制送還し、本国政府が訴追し処罰する決まりになっていた。

2013年にPKO局アジア・中東部長の中満泉氏に直接お会いすることができ、国連が2012年12月に全ての国連職員の人権審査に関する新しい方針を採択したことを知った。今年も同氏が対応して下さり、「国連人員の人権審査」と題する正式な方針文書を手に入れることができた。

この方針によると、国連に人員を推薦する加盟国は、「各候補が刑事犯罪もしくは国際人権・人道法違反で有罪判決もしくは捜査か訴追を受けたことがないことを、そしてその知る限り、作為または不作為によって国際人権・人道法違反に相当する行為に関わった嫌疑をかけられたことがないことを保証する」ことが義務付けられている。
また、個人の立場で国連に就職する人からも「刑事犯罪で訴追されたことがなく、国際人権法・国際人道法違反を犯したことがない」という念書を取ることになっている。

つまり、「国際人権法・国際人道法違反」に関しては「嫌疑をかけられた」だけで国連職員としての適格性を失う。「刑事犯罪」で訴追された場合も捜査と起訴の内容を国連に開示することが義務付けられている。

国連事務局人的資源管理部(OHRM)と人権高等弁務官事務所(OHCHR)が共同議長を務める「国連事務局 人権審査作業班」が方針の実施状況を監視し、職員候補の人権履歴に関する情報交換の手順を策定することになっている。

中満氏によると、PKO局は、直接の苦情受付窓口を置いていないが、OHCHR、DPA、UNDPもしくは各国の国連常駐調整官に情報を提供すれば情報交換網を通じて、PKO局などに伝達されることになっているという。
PKO局は、人権審査の結果、解雇・本国送還した人員が本国でどのような処分を受けたかについても情報を収集しているが、その提供を政府に強制することはできないとのことだ。
スリランカなど軍が著しい人権侵害に加担したことが分かっている国からは増員せず、個人を雇用する時も人権侵害の疑いをかけられていないかどうか、ネット検索などで調べることが慣行になっているという。

<国連開発計画(UNDP)~CHTからの拙速な撤退にNO!>
UNDPは、2003年から2013年にかけて「CHTにおける開発と信頼醸成の促進」と題する2億1千万米ドル規模の開発事業を実施してきた。丘陵地帯の村々に「村開発委員会」を設け、村人が決めた事業に3500~7000米ドル相当の「即効ファンド」数千件を提供してきた。現在、同事業の評価と今後の方向性に関する検討が行われているが、規模を大幅に縮小し、実施主体を県評議会に移管することが議論されている。特にUNDPから事業を請け負っていたジュマNGOの多くが人員削減や閉鎖に追い込まれており、同プロジェクトで運営されていた小学校の内、国営化に必要な土地の登記が済んでいない228校が閉鎖されようとしている。ジュマ代表者は次期計画の立案にジュマが参画できるようにし、急な事業撤退をしないよう訴え続けている。

<先住民族の権利に関する特別報告者(SRIP)>
SRIPのジェームス・アナヤ氏(マオリ民族)とも毎年、情報交換を行ってきた。これまで同氏は、正式な書簡で2010年バガイチョリ襲撃事件、バングラデシュ北西部のフルバリ炭鉱開発計画、ジュマ女性に対する暴力およびCHT和平協定の実施の遅れについて政府に問い合わせ、回答を得て、人権理事会への報告書に盛り込んできた。
同氏は、バングラデシュで正式な調査を行うために招待してほしいと政府に要請してきたが、実現しなかった。今年9月からビクトリア・タウリ・コープス氏(フィリピン・イゴロット民族)にバトン・タッチしたが、彼女はCHTを何度か訪問したことがあり、活躍が期待される。

<国連政治局(DPA)~ 政治のレーダーに浮上>
国際政治に関する国連事務総長の諮問機関であるDPAとも毎年、情報交換を行ってきた。当初は「CHT問題は和平協定で解決したと思っていた。政治のレーダーに映っていない」と言われたが、UNPFII勧告で認識が変わったようだ。
2011年9月に潘基文氏が国連本部でシェイク・ハシナ首相らと会談した際に先住民族を話題に出され、ハシナ首相が「ベンガル人が我が国の主な先住民で、部族民は後から移住してきた」と応じたところ「そうすると貴国の国連大使も先住民ですね。大したものです」と笑ったそうだ。 
CHT委員会委員で米国タフツ大学教授のハンナム氏の元ゼミ生がDPAの実務担当をしており、反応はよいが中東情勢などに翻弄され、CHT問題に率先して取り組める状態にはないようだ。

<国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)>
国連で人権問題を統括するOHCHRとも毎年面談し、CHTの近況を伝えるとともに、アドバイスを頂いてきた。先住民族問題だけでなく人種差別、女性に対する暴力、宗教迫害、拷問などのテーマを扱う特別報告者、そして人種差別撤廃委員会などの条約機関、人権理事会による加盟国の人権状況の普遍的・定期的レビュー(UPR)にもっとマメに情報提供するよう勧められてきた。
国連の仕組みを十分活かし切れていないことを毎回、反省させられている。

<まとめ>
これまでCHT問題に関する国連での提言活動に相当な資金と労力が投入されてきたが、和平協定は実施が進まず、憲法で先住民族の存在が否定され、目標に向かっている実感は沸かない。
和平協定実施の追い風となるはずだった2011年のUNPFII勧告は、軍の逆鱗に触れ、政府との対話のパイプが細くなったように見える。しかし、CHT問題が「和平協定で解決した」という幻想が払拭され、再び国際社会で議題として取り上げられるようになった。

2012年末に「国連人員の人権審査」方針が採択され、新しいチャンスが巡ってきた。ジュマの人々を苦しめてきた軍の司令官のPKO派遣を阻止し、人権侵害にブレーキをかけるために新方針を活用すべきである。
そのためにジュマ関係者もNGOも国連の人権制度に精通し、軍や警察による犯行を漏らさず、テーマ別の特別報告者や条約機関に伝えてPKO局の注意を喚起し、国連から政府に問い合わせが殺到するようにしなければならない。国連会議への参加を「お祭り騒ぎ」として終わらせないフォローアップこそ大事である。

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国連にて、ジュマ関係者たちと(左端が筆者)

共同代表 トム・エスキルセン