2014/09/16 Tuesdayauthor: JummaNet サイト管理者

国連先住民族問題常設フォーラムでの提言活動を振り返る【part1】

ジュマ・ネットが例年参加してきた、国連先住民族問題常設フォーラムにおける提言活動の成果と課題につき、共同代表トム・エスキルセンが二回に分けて報告いたします。
今回は前半として、フォーラムの位置づけや流れ、2011年勧告、またバングラデシュとPKOについての報告です。

【国連先住民族問題常設フォーラムでの提言活動を振り返る】
ジュマ・ネット共同代表 トム・エスキルセン

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国連先住民族問題常設フォーラム参加のジュマ関係者


<はじめに>
ジュマ・ネットは例年5月にニューヨーク国連本部で行われる先住民族問題常設フォーラム(UNPFII)に2011年から毎年参加し、ジュマ民族代表の提言活動をサポートしてきた。
その成果と課題について振り返りたい。

<目標>
ジュマ民族が例年、国連における提言活動で目指してきたことは、バングラデシュ政府にCHT和平協定の実施を促し、ジュマ民族を先住民族として認めさせ、国連先住民族権利宣言(UNDRIP)に謳われている権利を勝ち取って行くということだろう。
ジュマ・ネットは、CHT委員会のチームの一員として、そうしたジュマ民族の提言活動を側面支援してきた。
CHT委員会は、国連機関との対話の場の設定、ジュマ活動家の間の連絡調整、サイド・イベントの企画、マスコミ対応などを行ってきたが、議事録・報告書作成などを担当させていただいている。
国際レベルで連携した活動がジュマ民族運動の内紛の和解のきっかけになることも期待している。

<国連で活躍するジュマ民族関係者>
例年、UNPFIIには、ジュマ政党PCJSS両派の関係者のほか、カパエン財団やCHT市民委員会といったジュマ市民団体、マレヤ財団などジュマ開発NGO関係者も参集している。
また、チャクマ王のデバシシ・ロイ弁護士はUNPFIIの委員を務め、提言活動をとりまとめる重要な役割を果たしている。PCJSSとPCJSS改革派は、国内では抗争を続けており、市民団体やNGOも政治の影響を受けているが、国際的な場では、和平協定実施という共通目標を掲げて何とか足並みを揃えてきた。
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チャクマ王デバシシ・ロイ弁護士

<国連への橋渡し役としてのCHT委員会>
2008年に再結成されたCHT委員会は、2002年から2007年までUNPFIIの委員を務めたアイダ・ニコライセン氏(デンマーク)と同じく2008年~2010年にUNPFII委員だったラース・アンダース・バエル氏(北欧サーミ民族)をそれぞれ共同代表および委員に迎え、2011年にはニコライセン氏の後任として、UNPFIIの事務局長を2003年~2010年まで務めたエルサ・ストマトポウロウ氏を共同代表に迎えたこともあり、国連と非常に強いパイプを持ち続けてきた。
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ラース・アンダース・バエル氏(北欧サーミ民族)

2011年にデバシシ・ロイ氏がアジアの先住民族を代表するUNPFII委員に就任し、彼の姉のチャンドラ・ロイ氏がストマトポウロウ氏の後任としてUNPFII事務局長に就任したことで、CHT問題を国連で取り上げる未曽有のチャンスが巡ってきた。

<2011年UNPFII勧告>
UNPFIIは2010年の第9会期で次年度にCHT和平協定の実施状況を議題として取り上げることを決め、それを調査する特別報告者としてバエル氏を任命した。
2010年秋に彼は、丘陵3県を歴訪し、2011年のUNPFII第10会期でCHT和平協定に関する詳細な報告書を発表した。
その中で、軍が行政や住民の生活に不当に介入していることが和平協定の実施を遅らせていることを指摘し、バングラデシュ政府に対して1)期限を設けて和平協定を実施すること、2)CHTからの軍の撤退を促進することを勧告し、国連PKO局に対しては、3)バングラデシュからPKOに派兵される兵士が国内で人権侵害を犯していないかどうかチェックするよう勧告することを提案した。
UNPFIIは提案を採択し、その旨、勧告した。

<バングラデシュ政府の反応>
バングラデシュ政府は、「我が国に先住民族はいないので、UNPFIIはCHT問題に関する管轄権がなく、それについて勧告する資格はない」と激しく反論した。
UNPFIIの上位機関である国連経済社会理事会(ECOSOC)の2011年7月の会合でバングラデシュ政府はUNPFII勧告の採択を阻止しようとしたが、あまり賛同が得られなかった。
ECOSOCはUNPFII勧告を変更なく追認し、政府の反対意見を脚注に記載することに留めた。
面目を失った政府は腹の虫が治まらなかったようだ。2011年6月に行われた憲法第15回改正で「全国民はベンガル人」と決めつけ、先住民族は「小さな民族集団」という名称を押し付けられた。
また、政府は全ての公文書から「先住民族」という言葉を削除するよう命じ、公務員が8月9日「国際先住民族デー」の行事に参加・協力することを禁じた。
CHT委員会の現地ミッションも妨害されるようになった。

<バングラデシュとPKO>
バングラデシュは、世界のどの国よりも多い約1万人の兵士と警察官をPKOに派遣している。
PKO派兵はバングラデシュの軍人にとって出世の登竜門であり、例えば、将校なら普段の給料(1万五千タカ=約2万円)の約十倍の報酬(2200米ドル以上)を得る又とないチャンスでもある。
政府もPKO兵士一人当たり毎月約1300米ドルの支払いを国連から受けとる。  
2012年にバングラデシュ国連大使は同国が国連PKO局から3年間で9億1900万米ドルの外貨を獲得したことを明かした。
これは同国の軍事予算(年間9億1900万米ドル)の約1/3に匹敵し、軍がCHTで得ている利益を遥かに上回ると思われる。 

CHTで襲撃事件を指揮した将校や特殊部隊RABで野党関係者を司法外処刑した兵士がPKOに派遣されていることが知られている。そのような兵士が海外の紛争地で住民の命や人権を尊重できるだろうか。国連の信用に関わる問題だ。
現にPKO兵士が援助物資と引き換えに性行為を強要するなど不祥事が続いたため、2003年にアナン事務総長は国連職員による性的搾取に関する「許容ゼロ」方針を打ち出さなければならなかった。PKOによる人権審査は、CHTにおける軍の横暴を食い止める決め手になり得るが、軍の急所を突き、逆鱗に触れることでもある。

<2012年~2014年 UNPFIIでの動き>
2012年は、コロンブスなど探検家たちが「無主地」の米大陸・豪州などを「発見」したとする「発見の理論」について考えることが特別テーマとなった。
CHT問題は直接、議題に挙がらなかったが、「人権」に関する議題でジュマ代表者たちは、CHT和平協定実施とPKO人権審査に関するUNPFII勧告を政府が無視し続けていること、女性に対する暴力が急増していることなどを訴えた。
また、ジュマ・ネットは国際NGOのIWGIAと共同で執筆したCHTにおける軍の役割に関する英語報告書を発表し、国連機関などに配布した。さらに国連に初めて参加するUPDF関係者1名を含むジュマ代表者4人の旅費を補助した。本国で対立する3派が顔を合わせる稀な機会となったが、文言の調整がつかず、統一した声明を読みあげるには至らなかった。

2013年は、保健、教育、文化に関するUNPFII勧告およびUNDRIPの実施状況、世界先住民族会議、国際金融機関との対話などが本会議のテーマとなった。
ジュマ・ネットは、ジュマ代表1名の現地滞在費を補助した。ジュマ代表者たちは、CHTで事業を再開しているアジア開発銀行に対して、住民の同意に基づき事業を行うよう要請し、弊害の多い小規模貸付や植林事業をしないよう訴えた。
また人権侵害、土地収奪、教育、憲法改悪などについて声明を読み上げた。IWGIA・市民外交センターなどの共催で「先住民族、和平協定、人権」をテーマにサイド・イベントが実施され、多くの参加者を集めた。

今年、2014年は、特別テーマとして「UNDRIPに合致した良き統治の原則」が議題となり、デバシシ・ロイ委員がCHT和平協定に基づく「土地委員会」をその実践例の一つとして取り上げる報告書を発表した。
ジュマの慣習法や伝統首長たちの役割を尊重した土地委員会の仕組みは、UNDRIPの精神に合致しているが、関連法に和平協定と矛盾する条項が残っているため、活動を開始できていないのが残念だと結論付けた。
政府代表は、土地委員会法の改正が遅れているのは、「全関係者の参加を保障する」ための「必要悪」だと述べ、和平協定を完全実施する政府の決意に変化はないことを強調した。
そのほか、ジュマ関係者は女性に対する暴力、人権などに関して10件ほど声明を読み上げ、アムネスティーはCHTの土地問題を、北欧三国はCHT和平協定の遅れを憂慮する声明を読み上げた。
CHT委員会はCHTにおける女性に対する暴力に関する報告書を発表した。IWGIA・市民外交センターなどの共催で「冷遇と不処罰:CHTにおける暴力」と題するサイド・イベントを企画したが、参加者は前年より少なかった。ジュマの旅費支援は行わなかった。

【part2】へ続く