2015/08/12 Wednesdayauthor: JummaNet事務局

開発と無言の旅立ち

筆者:レンヨン・ムロー・ナンチェン

 弱い立場の先住民族が土地を立ち去っていることが新聞で取り上げられた。 この知らせに人々がどのように反応したか、理解することは難しい。 これを聞いて飛び上がって喜んだ人々も少なくないだろう。 三月中旬にバンドルバン県のアリコドムを訪問した時に見たことを書けば、信じられないと思われるだろう。 ある階級の人々は、このことを聞いて、さらに歓喜するかもしれない。

 もともと、ポアムリ地区周辺には500以上の村があったそうだ。 今は40ヶ村残っているかどうかも疑わしい。 ドングリ村の上下のいくつもの村が、ゆっくり廃墟と化している。 これらの地区の住民のほとんどは、他所に移住してしまった。 その多くは家の灯油ランプを灯したまま、真夜中に逃げていったという。
 農地、宅地、丁寧に植えた木々、慣れ親しんだ空間、財産のほとんどを残して。 余程のことがなければ、全てを置き去りにして移住するはずはない。 まだ立ち去っていない人々も、そうしようかと悩んでいる。 新聞は、移住する理由に触れていないが、それも予想ができたことだ。 知るか知らないかに関わらず、誰もこの問題について声を上げたがらない

61JCIS.JPG (mroの住居。食事をつくる女性)

 ミャンマーから戻った三家族に遭遇した。 その涙を押し殺した痛ましい顔を見て、私は心の中で泣き叫んだ。 母国を去ることを余儀なくされた人々は悲惨だ。 筆舌に尽くしがたい困難の物語を語ってくれた。しかし、ここに戻っても幸せはない。
 開発の恐怖が常に付きまとっている。 開発のために道路が通り、道路を建設するために住民が利用する池から石が採掘され、労働者によって女性たちがレイプされる。 開発が行われるところでは、山や木々がなぎ倒され、工事現場が作られ、観光業の発展のために住民が追い立てられ、犠牲になる。

 パミア村、アドゥー村、ディリ村、そして半径13キロの村々は、トラックが池を突っ切り、飲料水源を泥沼にするのを見てきた。 石を採掘する労働者が女性たちに危害を加えるのを見てきた。 犯人が裁かれる見込みは微塵もない。
 ルンベット村では家々の内庭から石が集められた。 この地域の住民は毎朝、目を覚ますと、労働者が家の内庭に侵入して石をかき集め、女性たちに悍ましい視線を送るのを目の当たりにした。 その結末も予想できることだった。石を採掘する労働者に女性がレイプ未遂に遭った。 ディム山の近くの広大な土地に[軍の]訓練所ができるそうだ。 このようなことを見聞きすると身の毛がよだち、追放される恐怖に身がすくむ。
 スアロクとトンカボティから追放された痛ましい日々を思い出させられる。 デバ村、クラマディ村、ラムリ村、シャッコイ村、クラントゥン村、クワン・ナイッチャ・クヤ村の元住民は、今も追放という呪いの傷跡を負っている。 その日は、涙を流しながら家から立ち退き、厳しい寒さの中、ホームレス状態で幾夜も過ごさなければならなかった。 そして今は?

 収用された後、土地は企業にリースされ、 元住民はそこで日雇い労働者として働いている! スンナム・フン(チョンドロ山)に観光リゾートができるというニュースを聞いて、私たちはさらに恐れ慄いている。 観光スポットができれば、私たちに利益がもたらされると言われている。 雇用が創出され、経済的に自立できるという。 ニルギリ・リゾートだけでも私たちは十分苦しめられた。 ニルギリ・リゾートを建設するためにカプルー村の全住民が立ち退かなければならなかった。 住民は再定住させられたが、新しい場所にも安心して暮らすことができない。 再び立ち退かされる可能性があると言われている。 ニルギリ・リゾートを作るときも同じようなことが言われた。 雇用創出、自立、支払能力の向上などが約束された。 それは何も実現しなかったし、これからもしないだろう。
 むしろ、正反対のことが起こった。 観光開発の名目で私たちの土地は収奪され、私たちは、さらに不自由になった。 サングラスをかけて都会からやってきた青年たちは、我々を見かけると、原始人を発見したかのように興奮して飛び跳ねる。 スンナム・フン周辺の工事で、さらに恐怖がもたらされることは間違いない。 さらに多くの立ち退き、困窮、レイプが押し寄せるだろう。

ニュースが知らせるは、このような結末だ。

つまり、私たちは生存を脅かされている。 もう逃げ場はどこにもない。 将来どうなるかは、時間だけが知っている。

800px-Ploong.jpg(伝統的な竹パイプを演奏するMroの青年)