2011/04/20 Wednesdayauthor: 共同代表 トム・エスキルセン

ラムガーで治安軍に支援されたベンガル人入植者がジュマ民族に対して大規模な襲撃・放火を行う

2011419PCJSSプレス・リリース

2011417日、チッタゴン丘陵地帯カグラチョリ県で治安軍に直接支援されたベンガル人入植者が先住民族の住むラムガー郡ハフチョリ・ユニオンの5つの村とマニクチョリ郡の2つの村で大規模な放火・襲撃を行った。この攻撃で、二つの仏教寺院を含め、ジュマ民族の家屋約200軒が全焼して灰と化した。女性3人を含め少なくとも20人のジュマ民族が負傷し、現在も6人以上が行方不明となっている。入植者の攻撃を受けたジュマ民族は森に逃げて隠れている。

襲撃事件の背景

カグラチョリ県ラムガー郡ハフチョリ・ユニオンのハティムラ地区で村落防衛隊(VDP)隊員のモハマド・ジョイナル・PCが率いるベンガル人入植者たちはルイラ・アウン・マルマ(父:ピジャ・アウン・マルマ)というジュマ民族の村人の所有する15エーカーの土地を奪おうと試みていた。

ジュマ民族の多くが伝統的なボイサビ(ボイシュ、サングライ、ビジュ)祭を祝っていた時にモハマド・ジョイナル・PCが率いるベンガル人入植者たちが上記のジュマ民族の土地を占拠しはじめた。土地を所有する地元ジュマ民族は彼らに止めるよう要求し、陸軍など地元当局に問題を知らせたが空しい結果となった。

襲撃事件の概要

2011417日午前10時ごろ、ベンガル人たちは茂みを切り払い、仮小屋を立て始めた。そしてジュマ民族にも攻撃をしかけ、ジュマ民族も抵抗することを余儀なくされた。その結果、女性一人を含むジュマ民族約10名が負傷した。ベンガル人入植者5人も重症を負い、そのうち3名が病院に運ばれる途中で死亡した。亡くなったのは、コチュ・バンテ地区のアユブ・アリ(38才)とボロ・ピラク村のノアブ・アリ(60歳)とシュニール・ショロカル。

その反動で、グイマラ旅団の兵士に援護されたベンガル人入植者たちがラムガー郡ハフチョリ・ユニオンのションコラ村、トイコルマ村、レモロム村、シュルドン村およびポタチョラ村のジュマ住民を攻撃し始めた。ジュマ民族の住居は略奪後に放火された。軍隊が付近をパトロールしていたが、ベンガル人入植者がジュマの家屋に火をつけるのを止めようとしなかった。陸軍が道路沿いでパトロールを続ける間、ベンガル人入植者はジュマの村々に入って放火を開始した。この攻撃によりションコラ村で1つの仏教寺院を含め約100戸の家屋が全焼して灰と化し、トイコルマ(コチュ・バンテ)村で15戸、レモロム村で15戸、シュルドン村で25戸、そしてポタチョラ村で16戸の家屋が放火された。

一方、ベンガル人入植者はチッタゴン市やフェニ市からカグラチョリ市に向かうシャンティ交通などのバスに乗っていたジュマ乗客を降りさせて暴力を振るった。この攻撃で女性2人を含め少なくとも10名のジュマ民族が負傷した。グイマラ地区ボトトリ村のミトゥ・マルマ(13歳、メホラ・プルー・マルマの娘)とラムガー郡ジョウト・カマル地区バザール・チョウドゥリー村のパイクラ・マルマ(50歳、モンシャ・マルマの妻)が被害に遭った。ミトゥ・マルマは重傷を負ってマニクチョリ病院に入院した。

午後6時ごろベンガル人入植者はマニクチョリ郡マニクチョリ・バザールでデモ行進をした。彼らはベンガル人の遺体を担ぎながらジュマ民族を非難するスローガンを叫んだ。ベンガル人入植者が遺体をデモ行進に運び出した時も行政は止めようとしなかったという。逆に地元行政が受身な態度を示したため、ベンガル人入植者は感情的になり、興奮が高まった。デモ行進が終わるや否やベンガル人入植者たちはマニクチョリ市モハムニ地区のジュマ家屋に放火しはじめた。この攻撃でケジャイ・カルバリ村のジュマ村人の家屋が少なくとも15戸、全焼したほか、ジュマ住民の5つの店舗と住居10戸が略奪され、荒らされた。店舗を荒らされたジュマ民族は、モンシャジャイ・マルマ、ランフラ・オン・マルマ、ウッジョル・ラカイン、チャイフラ・プルー・マルマ。さらにチッタゴン~カグラチョリ幹線道路のマニクチョリ市からジャリア村までの7~8キロ区間およびジャリア村からガッチャビルまでの10キロ区間で道路両側にあったほとんどのジュマの家屋が略奪され、多くが荒らされた。

また多くのジュマ民族が現在も行方不明となっているという。たとえば、タナ村から森に山菜を取りにでかけたマルマ人女性2名の行方が分からなくなっている。チッタゴン市からカグラチョリ市に向かっていたバガイチョリ郡ルパカリ村出身のアシシュ・チャクマ(父:ビッゴ・チャクマ)も行方不明のままである。

一方、陸軍諜報機関が付近で事実を捻じ曲げた報告を流布させている。同地区では朝から陸軍が展開しているが、入植者を保護して襲撃を実行し易くしている。

2011418日にもベンガル人入植者の遺体が見つかったと報告されている。そのため、同日夕方、ポタチョラ村、アムトリ村、チウリ村に集まったベンガル人入植者がジュマ民族を非難するスローガンを叫んだ。

襲撃の意図:

CHT和平協定の実施が滞り、CHT和平協定に基づく土地紛争の解決が図られていないため、チッタゴン丘陵全域でベンガル人入植者たちが地元行政や軍の支援の下でジュマ民族の土地を占拠し続けている。この目的で、ベンガル人入植者たちは、さまざまな口実を作ってはジュマの村人に対する攻撃をしかけてきた。今回の事件は、マルマ人が辛うじて占有し続けている僅かな土地を奪う意図を持って軍当局の中の原理主義分子が後援した計画的なものだったことが分かる。

同時にCHT和平協定に反対するテロ集団UPDFはチッタゴン丘陵で不穏な状況を作り出し、CHT和平協定の実施を遅らせるために、民族間の緊張を煽る活動を行っている。信頼できる情報源によるとションコラ村でベンガル人入植者とジュマ村人の争いが起こっているときにUPDFの武装テロリストが銃を数回、発射したという。さらにUPDFの武装メンバーが抑圧的な活動を続けていることに地元ジュマ住民が苛立っていたとも言われる。さらにUPDFがベンガル人入植者にジュマ村人の林地で農業をすることを許可し、使用料を取ろうとしていたが、その徴収ができずにいた。このため、UPDFがこの機会を利用して、地元ジュマ村人を追い詰め、ベンガル人入植者に仕返しをするために銃を数発、発射して民族間の緊張を煽ろうとしていたと考えられる。

政府の動き:***

暴力が広がっていたため、417日午前8時に地元行政は同地域で刑法144条を24時間発動させ、集会・デモ行進・火器の所持を禁止した。

2011418日朝に地元与党(アワミ連盟)国会議員ジョティンドロ・ラール・トリプラが軍による厳しい監視の下で現地を訪問した。彼は被害者に「十分な」補償を行うと約束した。カグラチョリ県評議会議長クジェンドロ・ラール・トリプラとチッタゴン地域警察署副署長モハマド・ナウシャル・アリがトリプラ議員と同行した。午後に彼らはジャリア村公立小学校の敷地で公開会合を開いた。会合には主にベンガル人入植者が出席したが、マルマ人指導者も何名か参加した。

チッタゴン管区陸軍総司令官(GOC)アシャブ・ウッディン少将、カグラチョリ県知事(DC)アニスル・ホク・ブイヤン、警察本部長アブ・カラム・シディキ、地元リーダーのコンジェリ・マルマ、ラムガー郡評議会議長ベライェド・ホセイン・ブイヤンも会合に参加した。

しかし、マルマ開発評議会のリーダーたちの一行が被災地への訪問を許可されなかったと言われる。彼らは安全確保という理由からグイマラ地区で足止めされた。

一方、県知事は県副知事(総務担当)モハマド・シャラウッディンを委員長とする3人からなる[調査]委員会を結成させた。他の委員は、カグラチョリ警察副署長デルワール・ホセイン・サイェディー、ラムガー郡行政官ゴパール・チョンドロ・ダーシュだ。委員会は2業務日以内に報告書を提出するよう要請されている。

2011418日に陸・海・空軍広報局(ISPR)はこの事件に関するプレス・リリースを出した。そこでは、ベンガル人入植者は「罪が無い」といい、罪の無い丸腰のベンガル人に鋭い武器をもった丘陵民テロリストが襲い掛かったために事件が始まったとしている。しかし、ISPRも襲撃事件でベンガル人とジュマ民族双方の住居が焼失したことを認めた。

抗議:

チッタゴン丘陵人民連帯協会(PCJSS)と丘陵学生評議会(PCP)は、ジュマ民族に対する凶悪な放火・襲撃事件に断固として抗議し、犯人の処罰を要求した。2011418日朝にPCPはダッカ大学キャンパスでデモ行進を行った。PCPは、政府が被害に遭ったジュマ村人に十分な補償、治療、生活再建策を提供し、チッタゴン丘陵から全ての仮設駐屯地を引き上げ、「ウットロン作戦」による実質的な軍事支配を止めるよう要求した。

人道的な市民・諸機関へのアピール

PCJSSは、国内外の人道的な市民・諸機関に要請します。ジュマ民族に対する凶悪な放火・襲撃事件が二度と起こらないようにし、CHT問題を恒久的に解決するために次の救済措置を取るよう求める手紙をバングラデシュ首相に送ってください。そのコピーを内務大臣とCHT問題担当大臣にも送ってください。

1.       被害に遭ったジュマ村人に十分な補償、治療、生活再建策を提供すること

2.       放火・襲撃事件に関与した人々を逮捕し、戒めとなるよう厳しく処罰すること

  1. チッタゴン丘陵でこのような事件が再び起こることがないよう必要な措置を取ること
  2. 2001CHT土地紛争裁定委員会法をCHT地域評議会の勧告通りに修正し、チッタゴン丘陵で土地紛争の解決を図ること
  3. テロ集団UPDFを禁止し、その武装テロ活動を封じるのに必要な行動を取ること
  4. 十分な人権・人道面での配慮の下でベンガル人入植者をチッタゴン丘陵地帯の外に再定住させること。

7.       CHT和平協定の速やかな実施を保障すること

(注記:このプレス・リリースは現地のジュマ政治組織の見解を示すものであり、あくまでも参考情報として提供しているものです。)