2006/12/03 Sundayauthor: jummanet(n)

CHTで総選挙の前哨戦はじまる

バングラデシュでは、5年間続いたBNP政権の任期が終了し、10月30日に政府は選挙管理暫定政権に移行した。来年1月ごろに予定されている総選挙に向けて、BNP・ジャマート・イスラム党の前与党連合とアワミ連盟率いる野党連合の間で暫定政権や選挙管理委員会の構成などをめぐって連日、激しい衝突やデモが続いている。チッタゴン丘陵地帯でも、選挙の前哨戦がはじまっている。

和平協定に反対するジュマ民族政治組織UPDFは、いち早く9月9日にCHT3県で総選挙に立候補することを発表した(デイリー・スター紙9月10日)。

1997年に政府と和平協定を結んだジュマ民族政党PCJSSは10月3~4日にランガマティで中央委員会を開き、和平協定の実施状況、有権者名簿、治安状況などについて総選挙に向けた議論を行ったが、既存の政党連合を支持するか、自ら候補を出馬させるかは、結論が出なかった(デイリー・スター紙10月4日)。

10月11日にBNP党首、カレダ・ジア首相はCHT3県を訪問し、ランガマティでPCJSSショントゥ・ラルマ代表やチャクマ王、モン王、ボモン王と会談した。CHT各地で首相は、BNP政権下で開発事業が進展したことを強調し、観光業振興のためにもベンガル人とジュマが仲良く共存すべきだとアピールしたが、和平協定については一言も触れなかった。ラルマ氏は首相に地域評議会・県評議会の運営規則の決定、裁判所の設置、県評議会への権限の委譲などを要求した。(PCJSS 10月15日報告書)

11月2日にPCJSSカグラチョリ県支部は、同県での公正な選挙を実施するのに適した環境を作るためにワドゥッド・ブイヤン(過激な入植者リーダーで元BNP党議員)をCHT開発局長の座から退任させるよう要求する暫定政権首脳あての覚書をカグラチョリ県知事に提出した(プロトム・アロ紙2006年11月3日)。

11月18日にはPCJSS代表ショントゥ・ラルマ氏はアワミ連盟党首シェイク・ハシナ女史とダッカで会談した。ラルマ氏は、CHTで有権者の登録に不正があり、公正な選挙を行う状況が整っていないと述べ、選挙管理委員会のMAアジズ委員長の退任を求めたいと語った。しかし、PCJSSがアワミ連盟率いる14党連合に加盟するかどうかについては話し合われなかった(デイリー・スター紙、11月19日)。アワミ連盟はPCJSSと1997年に和平協定を結んだ政党であり、今回の総選挙で和平協定の実施を綱領に掲げているが、政権党だった2001年まで和平協定をまじめに実施しなかった。

一方、前CHT問題担当省副大臣モニ・ショポン・デワン氏(元BNP党ランガマティ県選出国会議員、チャクマ民族)は、BNPを離脱し、(90~96年のBNP政権時代にPCJSSとの和平交渉担当も勤めた)オリ・アハメッド元大佐らBNP党の一部の元幹部が新しく結成した自由民主党(LDP)に入ることを発表した。BNP党ランガマティ県支部は彼を裏切り者として「ランガマティに入るべからず」と宣言し、彼の人形に火をつけるなどして怒りをぶちまけた(デイリー・スター紙10月29日)。11月21日に同氏はランガマティ県でLDP党から立候補すると正式に発表した(デイリー・スター紙11月22日)。

PCJSSは前回の2001年総選挙を、和平協定に反して有権者名簿にベンガル人入植者が登録されたことに抗議してボイコットした。今回の総選挙で、この未解決の問題を棚上げにして候補を出すかどうかが大きな焦点となる。PCJSSに対するジュマ民族の支持の度合いを測る大きな試金石ともなるだろう。