2005/03/14 Mondayauthor: jummanet(n)

エコ・パーク計画:バンドルバンで不安高まる~先住民族リーダーは集会で抗議を決定

デイリースター

 バンドルバン丘陵県のチンブック山系にエコ・パークを作る政府の動きを受けて先住民族の間で不安が高まっている。計画中の公園はバンドルバン・ショドル郡、ルマ郡およびラマ郡にあるガレンギャ、タケルパンチョリ、ダルチョリ、トンカボティ、ホリンジリ、レニコン、レムチョリ及び南ハンガル地区にまたがる5000エーカーの土地に及ぶものである。情報筋によると、これらの地域に住むムロー民族など約5000人の先住民族が移住を強いられるため、先住民族リーダーは同計画に反対を表明している。
 リーダーたちは、この動きに反対するキャンペーンを開始している。彼らは昨日、ショドル郡トンカボティ村の先住民族と会合を持ち、計画中の公園で起こり得る影響について話し合った。リーダーたちは、同地域の全ての首長たち、カルバリ(草の根レベルのリーダー)たちと近々会合を開催し、この動きに抵抗するプログラムを打ち出すつもりだと語った。森林局は、公園が作られる際は補償と再定住を図ると住民に約束しているが、人々は多大な不安と心痛の中で毎日を過ごしている。過去にカプタイ水力発電ダムや軍の駐屯地の建設で移住を強いられた数千人の人々が今もその苦悩の記憶に苛まれている。

 1989年に陸軍訓練センター建設のために11,443エーカーの土地が収用された時も多数の先住民族が土地を失った。その後も様々な軍事施設の建設で15,000エーカーの土地が取り上げられたという。少なくとも800世帯の先住民族は再定住地を与えられず、現在も苦しんでいるという。

 ムロー社会協議会会長、シュアロク・ユニオン評議会議長のラン・ライ・ムロー氏は、自分たちを強制移住させるエコ・パーク建設の如何なる動きにも先住民族は抵抗するだろうと当記者に語った。そのような動きは、まず地元住民と話し合われるべきだと彼は言う。
 先月末エンプパラ村でこの動きに対する抗議集会が行われ、CHT土地権・森林委員会バンドルバン県支部長ジュムリアン・アムライ氏および8つのモウザ(行政単位)の首長とカルバリが参加した。トンカボティ・モウザ首長プルノ・チョンドロ・ムロー氏が議長を務めた。演説者たちは、計画中のエコ・パークで住民はカプタイ・ダムや他の政府施設の建設で被ったのと同じような悲劇に見舞われるだろうと語った。それらのプロジェクトでも土地や補償が約束されていたが、移住させられた住民の多くはそれを受けることができなかった。

 CHT地域評議会議長ジョティリンドロ・ボーディプリーヨ・ラルマ、別名ショントゥ・ラルマ氏もこのプロジェクトに度々抗議していると彼らは言う。しかし、バンドルバンでチッタゴン省森林局長アボニ・ブーション・タクール氏に問い合わせたところ、政府は計画の実施可能性を検討中であり、エコ・パークを建設する決定はまだ下されていないと語った。計画は地元住民を移住させる形では実施されないと彼は付け加えた。

 対象地を選定し提案を検討するためにチッタゴン地域森林管理局長率いる17人の委員会が昨年12月に結成されたが委員会は過去三ヶ月間会合を開いていない。

 影響を受ける住民の中には先住民族のムルン民族も含まれる。CHTで最も不利な状況に置かれている総人口約1万2千人のムルン民族は、バンドルバン丘陵県で数百世帯の先住民族を立ち退かせかねない同プロジェクトに抗議している。2月15日にバンドルバン県パンクパラでムルン民族は抗議集会を行った。ショドル郡、ロアンチョリ郡、ルマ郡、ラマ郡でも公園を建設する計画がある。
●コメント

  バングラデシュ平野部モドゥプールのマンディ(ガロ)民族に続いて、CHTの先住民族も「エコ・パーク」に土地を奪われようとしている。「環境保護」を理由に先住民族が先祖代々の土地から閉め出される例は世界で後を絶たない。アフリカのボツワナでは、ガナ民族、グウィ民族(通称ブッシュマン)が先祖代々の土地であるカラハリ動物保護区から閉め出されており、政府を相手に裁判を闘っている。スリランカの先住民族WANNIYALA-AETTO(通称Veddah)民族もMaduru Oya 国立公園から追い出されている。珍しい民族衣装を着て観光客を喜ばせるのはいいが、伝統的な狩猟採集は「密猟」として取り締まられ、焼畑などの農業も「森林破壊」のレッテルを貼られる。

 途上国政府だけではない。先進国の環境NGOも「手つかずの自然」を守るために先住民族の締め出しに少なからず荷担してきた。こうした傾向はイヌイットによるアザラシ猟や捕鯨に反対する感情的なキャンペーンにも見られる。「オランウータンを救う」テレビ番組は視聴率も上がるが、森に住む人間に同じ関心が寄せられるだろうか。私たちの意識も変わる必要がありそうだ。

 「先住民族とのパートナーシップ」、「事前協議と同意形成」などの標語が近年使われるようになり、プロジェクト開始前に住民と形ばかりの協議が行われるようになってきている。しかし、先住民族が主体的に意志決定や運営に参加できている国立公園や開発プロジェクトは果たしてどれくらいあるだろうか。大自然が残っている地域の多くが先住民族の生活圏であることは、彼らが自然を大切に守ってきた証拠でもある。自然を守りながら利用する先住民族の英知を未来に活かしたい。北方領土問題も、アイヌ、ウィルタなど先住民族に領土権を認め管理を委ねるのが最良の解決方法かもしれない。